オルタナティヴ・ロックバンドTHE BACK HORN
1998 年に結成したTHE BACK HORN “KYO-MEI” という言葉をテーマに、聞く人の心をふるわせる音楽を届けていくというバンドの意思を掲げている。
そんな彼らが2017年2月22日に宇多田ヒカルとの共同プロデュース「あなたが待っている」をリリース!
共同プロデュースに至った経緯や曲に込めた想いなどをMeの編集部がインタビューしてきました!
まずは自己紹介をお願いします。
松田晋二(以下、松田) ドラムの松田です!よろしくお願いします
菅波栄純(以下、菅波) ギターの菅波です!
菅波 この二人はちなみに福島出身なんです。
早速ですが、22日発売のシングル「あなたが待ってる」ですが、今回は宇多田ヒカルさんとの共同プロデュースとなっていますよね。どういった経緯からだったんでしょうか?
菅波 知り合ったのは10年ぐらい前で、宇多田さんがTHE BACK HORNのライブを見に来てくれたり、そこから一緒にご飯食べたり、ボーカルの山田が宇多田さんの楽曲「One Night Magic」(アルバム『ULTRA BLUE』収録曲)にゲストボーカルとして入ったこともあったんです。
「あなたを待っている」のメロディを書いているときにボーカルの山田と宇多田さんの声が重なって聞こえてきて、山田将司以外の声が聞こえるというのが初めてで、最初戸惑ったんですけど、それが妄想のなかですごく素敵だったんです(笑)。
これを現実にできたらこれ以上の喜びはないと思って、メンバーに曲ができたけど、宇多田さんにコーラスで参加してもらえたらうれしい、オファーしたいんだけどって相談して、話し合って、メールを送ったんですね。「声が聞こえてしまって、それを聞いてみたいから」と。
そしたら宇多田さんから「やる」という風に返ってきて。そこに「なんで?」とか「どういう経緯で?」ということが一切なく、「やります!」みたいな感じで来たのがかっこいいなと思いましたね。心意気というか、男前というか(笑)。やるからにはもっとがっちり手を組んでいい音楽作ろうと言ってもらえたので、共同プロデュースという形になりました。
松田さんは、菅波さんから「宇多田さんとやりたい」と聞いたときには、どう思いましたか?
松田 栄純(菅波)の中でも彼女の声がずっと頭のどこかにあったのかな、と思いましたね。実際楽曲自体を聞いた時も、聞こえてもおかしくないメロディというか楽曲だったので、バンドとして思いを伝えてみようという気持ちになりました。
デモができた時点で、曲のテーマは決まっていたんでしょうか?
菅波 決まっていました。あなたが待ってるって思っただけで、その場に居なくても、心があったかくなるみたいなことをテーマにしようと思っていて、歌詞は半分ぐらいできていましたね。
宇多田さんと、具体的にじゃあどうするかって話をしたときに、歌詞がまだ完成していないから共作しようという話になりました。宇多田さんの書いてくれた歌詞と、自分の書いた歌詞と、まざってできています。
歌詞ができあがったときは、どういった感触でしたか?
菅波 びっくりしましたねえ。すごく良くて。テーマを話す前に宇多田さんから歌詞が送られてきたんです(笑)。なんで伝えたかったことが、分かるんだろう…ってすごくびっくりしました。
どういう段取りをしていくかとか、細かい演奏をどうしようかみたいな、ピアノとかストリングスのアレンジも宇多田さんにはやってもらったので、歌詞が向こうから返ってきた後なんですけど、感想とか話す機会が30分くらいあって、そこでテーマを伝えたら、「ああやっぱりね」みたいな(笑)。この人すげえ…とか思って。
そういう感覚は初めてでしたか?
菅波 初めてでしたね。歌詞の共作自体初めてだったので。マツ(松田)と実はインディーズの時にあるんですけど、それ以来、ほとんど初めてだったので、しかも男女でっていうのも、すごく面白かった要因の一つではあると思いますね。
作家として宇多田さんのことは尊敬していて、そういう意味でも刺激的でしたが、男女の考えの違いっていうのはどうしてもあると思うんです。
それが入ってくることで、その深みが歌詞に出たし、いろんな見方を出来るような歌詞になっていて、恋愛にも見えるし、家族に向けてにも見えるし。そういうのがすごく刺激的でしたね。
誰にでも当てはまるような歌詞と、メロディですよね。
菅波 そうなっていったら嬉しいですね!
松田 いつか終わってしまうような儚さを分かった上での楽曲なんですね。だからこそ、あなたが待っていると思うだけで、あったかくなるし、切なくも感じるというところかなって。仕上げた宇多田さんの視点みたいなところはすごいなって思いましたね。
宇多田さんが入ることによってバンドとしては、ここが変わったなって部分はありましたか?
松田 宇多田さん的にひょっとしたら前々からTHE BACK HORNのライブを見てくれたり楽曲を聞いてくれている時に、私だったらこうするなとか、なんとなくそういう視点で常に聞いてくれていた部分もあったのかなって。これは本当に確かじゃないんですけど。そういう想像をしていたからこそ、いざやるとなった時に、私だったらこう聞きたいとか、そういう視点の中でのTHE BACK HORNらしさを引き出してくれた部分もあるんじゃないかな。
ロックバンドだとどうしても、テンションや熱で行こうぜっていうレコーディングが多いんですけど、実際このドラムのフィルは必要なのか、この楽器は必要かとか一個一個しっかり厳選して楽曲を仕上げていくという作業は、自分たちではなかなかやっていなかったレコーディングのやり方でした。だからこそより強いものができたので、刺激にも勉強にもなりました。
最終的なものができあがって、聞いた時はどうでした?
菅波 僕は宇多田さんの声をデモの時点で妄想していたわけじゃないですか。でも、当たり前なんですけど、想像を超えるくらいすごくいいものになっていて、本当に一人でも多くの人に聞いてほしいって強く思いました。
松田 すごく温度が増された感じに仕上がったなと思いますね。
デモの段階だとどうしても仮録りというか、無機質になってしまうんですが、実際生でレコーディングして、宇多田さんがディレクションしてくれた歌とか演奏含め、生々しい感じがすごくピックアップされていました。
温度のある演奏、かつ温度のある音作りになって、切ない部分もあるんですけど、まさにあったかく感じる楽曲に仕上がったなって感じがしています。
ARABAKI ROCK FESTに皆勤だったり、仙台や石巻にも、ライブなどで今までも来ていただいていますが、仙台にはどんな印象がありますか?
松田 僕はライブ以外にもラジオのレギュラーとかもやらせてもらっていて、仙台に来ることも多いんですけど、毎回自分の中で宮城ってどうなんだろうなって自問自答しながらやっているんですけど、どうしてもライブをやったときにお客さんの雰囲気とか顔が一番最初に出てきますね。
もちろん音楽を楽しみにしてきてくれているんだけど、人を待ってくれている雰囲気というか、THE BACK HORN自体を待っていたよって雰囲気があって、この前も電力ホールで初めてライブやったんですけど、初めてやる場所でもそういう感覚がしたっていうのは、やっぱり集まってくれているみんなの気持ちなんですよね。だから、仙台に来るとライブって印象がありますね。
菅波 わかるなあ。ライブの待ってくれている感じは、ちょっとホームな感じがする。自分が高校生の時とかは、福島から仙台に行くのは都会に行く感じだったね、憧れの町(笑)。仙台を歩いている女性とかもみんなおしゃれに見えて。
松田 我々が声をかけることのできない(笑)。
菅波 俺が歩いていていいのかなあ、みたいな。でも今や来ると帰ってきた感があります。
松田 音楽をやっていなかったら、ずっとそのままだったよね。敷居の高い仙台(笑)。
菅波 知り合ってみると人懐っこい感じが仙台の人にはあって。
ライブのお客さんの盛り上がりは熱いですか?
松田 すごく熱いですね!この間の電力ホールでのライブでは、ストリングスを入れてやったツアーだったので、最初から盛り上がるぞ!って感じではない新しい雰囲気で始まったツアーでした。場所によってはどういう風に盛り上がろうってお客さんも伺いながら始まるんだけど、仙台は最初から楽しみ方わかってます!みたいな。
そういうのがすごいなあって思いましたし、THE BACK HORNのいろいろな部分を分かってくれているホーム感を感じましたね。
1998年結成ということで、来年には20周年を迎えますが、THE BACK HORNさんは、常に曲を出し続けていますよね。バンドが長続きする秘訣はどういったところにあると思いますか?
松田 音楽を作り続けるというところがバンドの原点ですね。98年に結成してデビューのタイミングでベースが抜けたんですが、自分たちも一回メジャーデビューしたものの、時間をおいて体制整えてやろうかとか、いろんな選択肢があった中で曲を作り、それを形にして自分たちの納得する表現に落とし込んでやっていたっていうのは、悩んでいる時期とかでも、なにか楽曲にしてみんなに伝えて進んでいくっていう、たぶん自分たちが歩んできた道なのかなって。それをやめなかった、そこに挑んでいったっていうのが、続いている秘訣なのかもしれないですね。
THE BACK HORNさんは、本当にいつの時代でも居てくれる、って印象があります。
松田 最近、まわりからそういうこと言われる機会が増えたね(笑)。居なくなったら寂しいバンド、みたいな。なんか居るなあ、あいつら、横にいるんだよなあ。
菅波 どの飲み会にも顔出してんな、みたいな(笑)。居なかったら寂しいもんね。でも仕事を続けるコツはそこにあるのかもね。その時のできる限りのありのままで、ひとまずは仕事しちゃうっていう。
それは俺らだと音源という表現に代わっているんですけど、精神状態が危うかろうと、メンバーが不安定であろうと、その時々にしか作れないものがあるので、仕事でも悩むときとか、いろいろあるじゃないですか。悩んでいるときだからやれる、書けることとか、そういうのはあると思いますね。
バンドだけでなく、ほかの仕事でも共通している感覚かもしれないですね。
松田 いつか悩みから抜けるときは必ずあるので、なにかしら自分のなかで進んでさえいればいいんですよね。
自分たちの音楽の役割としては、いろんな作用はあると思いますが、力づくで行こうぜ!みたいな曲が多いんですが、今回の「あなたが待っている」とかは、ふと帰り道とかにも、家族のこととか、そういえばじいちゃんに会ってねえな、とか思い出せるような曲になったらいいなって思いますね。
今後、バンドとしての目標はありますか?
松田 とにかく20周年を盛大に、しっかり迎えられるように、ですね。それこそ仙台のファンの方とも一緒に分かち合える一年になったらいいですね。まずは、みんなと一緒に騒ぎたいなって、関係作りたいなって思っていて、そこから20周年を超えた作品が自分たちの中でどうなっていくのか。我々もまだ見ぬ表現が出てくるのかっていうのを、楽しみにしたいですね。
個人的な今年の目標はありますか?
菅波 最近英語勉強しはじめまして…(笑)。
松田 来た(笑)。
菅波 それを、なにかやりたいですね(笑)。英語で話せるようになるとか。去年の終わりぐらいからやりはじめて、中学英語も全然覚えてなかったので、そこから(笑)。
はじめるきっかけはなんだったんですか?
菅波 曲を作り始めたときも、ギター練習し始めた時もそうなんですけど、なにかやりはじめると新しい友達ができるんです。英語やりはじめたら、また新しい友達ができて。過程のなかに新しい世界が開けて行くことがあるから。なにかを始めたかったんですよね。
松田 地下鉄とかで、すごく困ってそうな外国人の方見ると、自分が英語話せたらここでなにか役に立ってるかもなあっていうのはあるし、そういうときに、全然知らないOLさんとかが対応しているの見てると、すげえヒーローだなって。
菅波 思う思う!俺もあったかもしれない、同じこと思ったこと。自分をもどかしく感じてね。
松田 俺が日本語で語りかけても、余計混乱を招くだけだからね。
菅波 じゃあ俺はそれで(笑)。困っている外国人の方に、道を教えられるようになる!
松田 僕は去年の年末くらいに自問自答しまして、もっと今まで適当にしてたなっていうことがいろいろありまして、それをもっとこうしっかり…(笑)。
菅波 なんというふわっとした…(笑)。
松田 心構えの話です。油断しない、もっと常にしっかりする。やっぱりそういうのが結構出てきちゃうんじゃないかなって思って、それをもう一回引き締めていこう。
菅波 油断しないの大事だよね。
松田 いろんな仕事も、謙虚に、当り前じゃないなってことを思いながらやらないとどこかで、油断しちゃうんじゃないかって思いまして。変な話ケガしたり、病気もそうですし、思わぬことになってしまうこともあるので、こういう20周年に向けて大事な時期でもあるので、またここでしっかり改めて、油断しない。常に謙虚に。
最後に、Meの読者に一言お願いします!
菅波 「あなたが待っている」、寒い季節に聞いてもらうと本当にいいものなんですけど、例えば引っ越しとか新生活の時期なので、そういうときにも聞くとすごく沁みる曲だと思います。そういう時のお供にしてもらえるとありがたいです!
松田 僕らライブ大好きで、仙台もすごくたくさん素晴らしいライブハウスがありますし、それこそMVとか色々パソコンで見たりとかして、音楽知ってもらうのもいいんですが、その一歩先に生で感じられる空間が待っているので、ライブハウスの扉をぜひ開けてもらえたら、新しい世界が待っているんじゃないかと思います!
商品情報
『あなたが待ってる』
品番 / 価格:[初回限定盤]VIZL-1137 / ¥1,400+ 税 [通常盤]VICL-37253 / ¥1,000+ 税
発売日:2017 年 2 月 22 日(水)
※iTunes Store、レコチョク、mora 他各音楽配信サイトでも配信開始
CD 収録内容
M-1. あなたが待ってる
M-2. 始まりの歌
初回盤特典 DVD 収録内容
「あなたが待ってる」MUSIC VIDEO
THE BACK HORNオフシャルサイト→http://www.thebackhorn.com/