働く女性を応援す仙台情報サイト「Me」

【青柳翔】映画『たたら侍』

青柳翔

2017年5月20日 全国公開 『たたら侍』


●まず『たたら侍』の話を最初にうかがったのはいつ頃だったのでしょうか?

青柳翔「錦織良成監督からお話をうかがったのは隠岐諸島に伝わる古典相撲と家族の絆をテー マにした『渾身 KON-SHIN』(2012 年)のプロモーションをしている時でした。また一緒に仕事をし たいという話になった時に、本当に軽い感じで監督が「時代劇なんてどう?」とおっしゃったんです。 その時に〈たたら〉のお話も少しされていました。でも、それがまさかこんなにたくさんの方々が協 力してくださるような作品になるとは正直思ってもみませんでした。HIRO さんや ATSUSHI さん、 AKIRA さん、直己さん、石井杏奈ちゃん、早乙女太一くんといった同じ事務所の方はもちろん、津 川雅彦さんや奈良岡朋子さんといった共演者、スタッフのみんなさんのおかげだと感謝していま す」

●錦織監督と『渾身 KON-SHIN』でご一緒した時はどんな印象を持ちましたか?

青柳翔「正しく言い表せているか自信がありませんが、周りの人をその気にさせるのがうまい方だ なという印象でした(笑)。監督はとにかく自分の撮影したい画への想いが強い方なんです。その 想い、例えば場所に対するこだわりやシーンに対する想い、人物に対する想いなどをしっかりスタ ッフのみなさんや出演者に伝えて、1 シーンずつ撮影していく。その熱意に引っ張られてスタッフの みなさんも一丸となって良い作品を生み出していくんです。僕もそんな監督の想いに引っ張ってい ただきました。もちろん監督だけではなく撮影の佐光朗さんや照明の吉角荘介さん、録音の西岡 正己さん、そして残念ながら公開を前に亡くなられてしまいましたが美術の池谷仙克さんなどいろ いろな方々から本当に良いアドバイスをいただきました。本当にありがたかったです」

●最初に脚本を読まれた時はどんな感想を持たれましたか?

青柳翔「やはりまず感じたのは、主人公の伍介は人を斬らないということです。そこは監督にも質 問させていただいた部分でした。ラストに向けてどういう風に演じたらいいのか、自分の中でもいろ いろと考えましたし、相談もしました。とにかく人が斬られて血しぶきが飛び散るというような描写 は一切ないんです」

●改めてうかがいたいのですが、〈たたら吹き〉の仕事とはどういうものなのでしょうか?

青柳翔「日本刀を作るには玉鋼(たまはがね)という純度の高い鉄が必要となります。それを作る ため奥出雲に古来から伝わっている製鉄技術が〈たたら吹き〉なんです。本編でも実際の〈たたら〉 で 3 日間ほど撮影しましたし、その前にも〈たたら〉がどういうものなのかを体験させていただいた りしました。その時に実際の村下にもお会いしましたが、言われたのはとにかく「炎に立ち向かえ」 ということでした。その熱さに耐えて立ち向かった者だけが作ることができるのが玉鋼。劇中で作 られていた玉鋼は本当に質の良いもので、それがあればまちがいなく良い刀ができる。その刀は 1000 年錆びないらしいんですが、まさに質の高さの証明でもあります」

●次に伍介というキャラクターですが、どんな人物だと感じましたか?

青柳翔「最終的に斬らないという信念に達するまで成長していく様を見せることが、伍介を演じる ことだと解釈していました。村を守りたいという想いから侍になることを決意する男ですが、とにか く何度も何度もいろんなところで失敗する人物なので、演じるのはとても難しかったです。演じやす いかどうかと聞かれたら、正直演じにくい役でした。でも、演じやすいのが良いわけではないと思 いますし、逆に難しい役だからこそ、いろんな人に話を聞いたり相談しながらできたので、自分にと っては貴重な経験になりました」

●そう言えば、映画で時代劇に挑むのは初めてですか?

青柳翔「舞台では演じさせていただいたことはありましたが、映画では初めてになります。なので、 まずはいろんな時代劇を観ることから役作りをスタートさせました。黒澤明監督のコレクターズ・ボ ックスも買って観たりしました。あと、『雨あがる』という映画での寺尾聡さんの立ち振る舞いはどうだったのかといったことを研究したり。その上で言葉はどうなのか、所作はどうするのかなど、他の 方にも相談しつついろいろ考えましたが、結論としては所作などにはあまりこだわらりすぎず、心 の動きに着目していこうと思ったんです。所作などについて言えば、実際当時生きていた方はいな いわけですし、正確なことはわかりません。であれば、自分が正しいと思ったことを堂々とやること が正解につながるのではないかという結論に至って演じてみました。それに伍介は階級で言うと 武士ではなくあくまでも村人なので、所作とは乖離した生活を送っていただろうと。監督からも所作 などに縛られるよりは、僕自身が考えたことに素直であって欲しいという言葉をいただいていまし た」

●勾玉の首飾りをかけていたりと、衣裳も今までの時代劇にはない感覚を受け取ったのですが?

青柳翔「今回の衣裳は EXILE を始めアーティストの衣裳も手がける LDH apparel が担当してくだ さっています。だから、今までにはなかった時代劇の服を着てチャレンジすることができました。例 えば、伍介の服はデニムのような生地を加工して作っているんですが、カスリと呼ばれる生地が 出雲地方にはあるんです。そういった布から作った衣裳に、着古したようにダメージ加工が施され ていたりしたんです。実際着心地は柔らかくて動きやすかったです。だんだん肌になじんでくるか ら愛着も湧きましたし、衣裳的には自分が着ていたものがとにかく一番好きでした。草鞋などは逆 に動きづらくて何度か草履自体が切れることもありました。手足や顔の汚しなども丁寧にしていた だきました」

●『たたら侍』に関しては役作りで何かした意識されたことはありますか?

青柳翔「一番よくやっていたのは、木刀を振ることでした。伍介がやっていたことであろうことをやり たかったんです。美術の方が 1 本の木から作ってくださった木刀だったのですが、手に馴染ませた かったし、愛着を沸かせたかったので常に持っていました。僕の場合、特にアクションが多かった わけではないので、殺陣師の方に基本の型を習ってそれをとにかくやっていました」

●殺陣などアクション・ディレクターは『ラストサムライ』でも知られる飯塚吉夫氏ですが、現場では どんなお話をされましたか?

青柳翔「他愛もない話ですが、当時は本当に刀を振りかぶったりしたのかということです。その間 に突かれたらおしまいですから、実際は突きが一番強いのではないかという話をしていました。で も、昔の方の常人ではない肉体の凄まじさで振りかぶっても大丈夫だったのかもしれない、なんて 話をしていました」

●実際に演じられてみて、ご自身と伍介の性格に共通する部分はありますか?

青柳翔「個人的には似ていないと思います。人によっては役柄を自分に引き寄せて演じられる方 もいますが、僕は台本を読んで役柄になれるように意識しています」

●あの雨の中の立ち回りは本当に凄かったですね!

青柳翔「映画は 2015 年 8 月から 11 月にかけて撮影していまして、豪雨の中での殺陣は秋頃の撮 影だったんです。ただ、真夜中である上にセットが作られたのが標高 400 メートルの場所。風など を遮るような林なんかもないロケーションで凍えるような寒さだったんです。しかも、雨粒をしっかり 見せるために 50 トンの水を 3 台のクレーンから放水設備を使って降らせていたので、前がよく見え ないくらいの雨量になっていました。だからこそ、直己さんも念入りに殺陣師の方と打ち合わせを されていたんだと思います」

●なるほど、そんな環境の中で撮影されていたんですね。他にも今回はベテランの方も多数出演 されていますが、みなさんとお話されたりしたか?

青柳翔「津川雅彦さんは津川家の犬の話をしてくださいました(笑)。また、奈良岡朋子さんとは食 事をご一緒させていただいたりと、楽しい時間を過ごさせていただきました。甲本雅之さんとは『渾 身』でも共演させていただいていて、今回も「伍介がやりたいことをやればいいよ」と言ってください ました。甲本さんはいつも全力で役に取り組まれる方であり、今作でも本当に支えていただきまし た。本当に日本の映画界を代表するような方々に囲まれながらの撮影で、勉強になることばかり でした」

●時代考証もしっかり計算し尽くされていたんですね。

青柳翔「そう言えば、セットの中でもう 2 ヶ月いるなぁと思った時があって、ふとそんなことを漏らし たら、あるスタッフの方が「俺はもう 1 年いるよ(笑)」と言ってらして驚きました。着工して半年かけ て建てているので、準備段階も含めると 1 年ほどいらしたそうです。セット内にある植物、例えば畑 の作物や苔、雑草などはすべて種から撒いて育てられたとか。ありがたいお話でした」

●〈たたら吹き〉の現場である、オープン・セット内に再現された高殿(たかどの)の出来はいかが でしたか?

青柳翔「現代の村下である木原氏の監修の元にあのセットは組まれたそうですが、昔ながらの手 法で釘を使わず、木を組んで建てられた建物だったんです。いわば出雲大社と同じ作り方。という のも、釘や鉄筋などを使うとあまりに室内が高温になるので曲がってしまってかえって危ないそう なんです。実際に火を焚くと炎が一番上まで行ってしまったりしていましたし、温度も何百度にもな ってしまうので、炉も地下構造まで造って中世の〈たたら吹き〉の現場を完全に再現していました。 要は本物の炉だったんです。劇中で本当に玉鋼を作ったのですが、それは本当に日本刀の材料 になりえるほど良質なものに仕上がったんです。撮影は夏だったんですが、本当は 1 月と 2 月に 〈たたら吹き〉をやるものなので、撮影時の暑さはハンパないものでプロの方ですら苦戦する過酷 な現場でした。僕は炉に砂鉄を入れるのが仕事という設定でしたが、その砂鉄を入れる時が一番暑かったですね。撮影している時は気が張っていたので大丈夫でしたが、尋常の精神状態では絶 対に耐えられなかったと思います」

●物語のテーマ性を語る上で自然も重要なポイントとなっていると思いましたが、印象的なロケ地 について教えてください。

青柳翔「北国船に乗った伍介が旅立つシーンがあるんですが、青森で実物大に復元された木造 船に乗船したんです。今で言う島根県の安来港まで石見銀山から出た銀や砂鉄を運んでいた船 なのですが、その間で立ち寄ったところで〈たたら操業〉が盛んになっていったんだそうです。復元 された船は自走ができないので 2 隻の船に牽引してもらって撮影は行われたのですが、いい経験 をさせていただきました」

●青柳さんは AKIRA さん、直己さんと一緒に現在〈ご縁の国しまね〉という島根の PR もされている んですよね? ロケ地である島根県の印象はいかがですか?

青柳翔「島根は『渾身』で隠岐島にうかがわせていただいてから何度も訪れていますが、素敵な場 所ですし、人も温かいですし、撮影にもとても協力的ですし、本当に大好きな場所です。こんな場 所はそうそうないと感じると同時に、いつも温かいサポートに感謝しています」

●さらに主題歌についてですが、最初に聴かれた時の感想はいかがでしたか?

青柳翔「あ、これはエンドロールを最後まで観てしまうなと(笑)。最高の曲だと感じました。久石譲 さんには音も何も入っていない状態のラフの映画をお見せして、そこからイメージを沸かせて作ら れたそうです。ATSUSHI さんの歌詞も久石さんと同じく映像を観て、心に残ったものから詞を組み 立ててくださったそうです」

●また、本作は『第 40 回モントリオール世界映画祭』最優秀芸術賞の他、多数の映画祭でも受賞 されていますね。どういうところが、海外でも評価を得られた要因だと思いますか?

青柳翔「映像もアクションも、本当に関わった全員がこだわりを持って作った作品だということだと 思います。〈たたら吹き〉という題材も注目していただけるポイントだと思っていたので、様々な部分 が評価されたのが嬉しいです。義を重んじるだけの従来の侍ではなく、ちょっと違う角度から見た 日本の侍像が受け入れられたのではないかとも思います」

●では、ずばり青柳さんの考える一番の見どころとは?

青柳翔「美しい映像を始め、すばらしいアクション・シーン、そして伍介がいかに憎しみの連鎖を断 ち切るかという物語まで、みんなのこだわりが詰まった作品になっていると思います。そういう意味 で、どこかひとつではなく、すべてが見どころだと思います」

●最後に、あえてうかがいますが、映画『たたら侍』が伝えようとしているテーマとは?

青柳翔「本当にいろいろなテーマを含んだ作品だと思います。伝統を守ることに対するテーマ性も ありますし、憎しみの連鎖を断ち切るというメッセージも込められていると思います。そして、日本 の心を描きながら、世界の人が観ても共感していただける作品を目指していくという、映画作りとし て挑戦していく姿勢もこの映画の裏テーマのひとつではないかと思っています。そんな様々なメッ セージが詰まっている作品ですので、観ていただいたみなさんそれぞれに何かを感じていただけ たら嬉しいです」

inteview:AYA YOKOMORI

camera:TAKASHI HIRANO

映画『たたら侍』
2017年5月20日 新宿バルト9、TOHOシネマズ新宿ほか全国公開 (c)2017「たたら侍」製作委員会

【公式サイト】tatara-samurai.jp/

この記事を書いた人
hanaemi
1983年仙台生まれ 2児の母。主婦の方にも楽しんでもらえるような情報を伝えていければと思います。
トップへ戻る