クリープハイプ
この書き下ろし楽曲「イト」は、ライバルを蹴落として勝ち残ろうともがく若きキャスト達の人生模様を、操り人形に例えての“糸”と生き抜く戦略の“意図”とを掛け、クリープハイプの真骨頂といえる現代社会を生きる人々へのメッセージを尾崎の作家経験で更に磨かれた巧みな表現力で紡いだ作品。
本当に世に広まって欲しいです。そう思える曲が作れた
――11枚目のシングル「イト」について聞かせていただければと思います。今回映画「帝一の國」の主題歌ということで、最初お話をいただいたときは、どのように感じましたか?
尾崎 何度かタイアップはやったことはあったので、これまでとはまた違った形にしたいなと思いました。作品に寄せて作ることが多かったんですけど、今回は、まずいい曲という土台を作ってから、歌詞で映画とリンクさせていこうと思いました。
――「イト」は”糸”と”意図”のダブルミーニングとなっていますが、このふたつの言葉をかけて歌詞を構成していこう、というのは映画の内容を受けてだったんですか?
尾崎 そうですね。原作・脚本を読んで、人間関係の繋がりの中で展開していく物語だと感じたので、それを人形に例えていこうと思いました。
――長谷川さんは、最初にあがってきた曲を聴いてどういう印象を受けましたか?
長谷川 まずメロディを聴かせてもらったんですけど、キラキラしていて、遠くに届く跳躍力と、受け入れてもらえる深く潜る力みたいなものを感じました。
――「イト」は明るめのサウンドに、”今は踊れ手のひらで”だったり、少し不穏なフレーズが印象的な曲ですよね。
尾崎 そうですね。曲がわかりやすく明るくなったので、歌詞は基本的にはわかりやすく、でも、ちょっと気持ち悪さと毒を残しましたね。「人形だな。可愛いな」と思って見ていたら、糸がしっかりついていて、っていうちょっとした毒は入れたかったです。
――「イト」がこういう曲になっていくだろう、みたいな実感や、あるいは希望みたいなものはありますか?
尾崎 本当に世に広まって欲しいです。そう思える曲が作れたこと自体久しぶりでしたね。昔の自分と戦っているという印象もあって、昔作れた曲でここまで行きたいなって思っていた目標にまた向かうような。なので、もう一度挑戦するという感覚でしたね。これまでは挑戦するという段階までも行けていなかったので、それが嬉しかったです。
――再チャレンジの楽曲なんですね。
尾崎 そうですね。今までも、当たり前にいい曲を作るってことはしていましたが、今回は特に思い入れが強いです。
長谷川 僕も、メロディを聴いたときから、すごく大事な曲になるだろうなと感じていました。だから、四人で丁寧に組み上げていったし、自分たちとしてはすごくいいものができたって実感があるんですが、そこから実際に聴いた人に愛してもらわないと、僕らの中だけで終わっちゃうので、結果が出てほしいですね。
ある程度制約があったほうがやりやすい
――これまでもCMだったり、ドラマだったりとタイアップをされてきていますが、タイアップの曲を書くというのは、通常曲を作るのと、意識の上で違いはありますか?
尾崎 まず、いいことが多いですよね。単純に曲を聴いてもらえる機会が増えるし、テーマも事前にある程度決められていて、作りやすくなるので。不自由さを感じたことはないですね。
――ということは、いつも曲を作っているときは、広い中から探ってくるみたいな感覚なんですか?
尾崎 そうですね。そこが大変です。なので、ある程度制約があったほうがやりやすいですね。
――カップリングの「君が猫で僕が犬」ですが、インディーズ時代の楽曲ですよね。このタイミングで収録したのは、どういった理由からだったんですか?
尾崎 カオナシから、「こういう曲が過去にあったけど、どうですか?」という提案があって、このタイミング、確かにいいなあって思って。
長谷川 カップリングは、バンドとしての幅を見せられる場所だと思っているんですね。今回の「イト」自体、たくさんの人に届くべきシングルだと思ったし、そういった中で、「君が猫で僕が犬」は歌然とすべき曲だという思いがあって、バンドのその幅を見せるのにいいタイミングかな、と。僕はずっとこの曲を覚えていて、いつか録りたいなって思っていたんです。
――尾崎さんが作詞されていますが、改めて「君が猫で僕が犬」は、どういったことをテーマにした楽曲だったんでしょうか?
尾崎 違う二人がお互いのことを考えている、っていう単純な曲ですね。人とのつながりの上で思うことを書いたので、そういう意味では「イト」と近いと思いましたね。
――当時の楽曲を、今もう一度やることで、なにか感じた変化などはありましたか?
尾崎 単純に、バンドとしてのレベルがあがったなって思いました。昔も一度この曲はやったことがあるんですけど、その時は形にならなくて。でも今は、短時間でも形にできたし、なにができてなにができないのか、というのもわかるようになったし、その上でできることも増えたと思うので。昔の曲をやると、バンドとしての変化がわかって、勉強になりますね。
――長谷川さんは、提案して、できあがったものを聞いて、どう思いましたか?
長谷川 できたらいいなとは思ったんですけど、やったことがないアプローチでもあったので、不安もあったんですね、最初は。でも、去年出したアルバム「世界観」だったり、作品集「もうすぐ着くから待っててね」の経験を活かして録ることができたので、うまく形になったなって。聴いて安心しました。
――今後、バンドとしての具体的な目標みたいなものはありますか?
尾崎 また武道館がやりたいなって、最近は思っていますね。でもそれだけじゃなくて、自分たちで飽きないような活動をしていきたいです。変わりすぎてもあれですけど、まわりにも飽きられないように。ずっと楽しんでやれたらいいです。
――去年の11月に「熱闘世界観」のツアーで仙台に来て頂きましたが、仙台の印象は?
尾崎 すごく都会だなあ、と(笑)。いろんなものがあるし、東京と過ごし方は変わらないですね。他の地方のように明らかに東京と違った感覚、っていうのはないんですよねえ。東京と地続きというか、過ごしやすいです。
――ライブでの盛り上がりは?
尾崎 お客さんとの相性がいいのかなって感じていますね。
長谷川 地方の都会のお客さんって、いいバンドだったりライブをたくさん見ているから、僕たちを試すような目で見るときもあるんですけど、仙台はいつも「待っていてくれてる」という感じですね。ステージに出る前に一度BGMが落ちて歓声があがるんですが、それが仙台は特に大きいです。
尾崎世界観が書く女性が好き
――クリープハイプさんの楽曲は、女性目線のような楽曲も多いですが、お二人の”女性観”みたいなものはありますか?
尾崎 全然分からないからないから、書けますね。知らないことなので自由に、勝手に、理想で。強くて、すごいものとして捉えているので、過酷な状況に描いても大丈夫というか。あんまり女性観というものがないから、書けるのかもしれないですね。
長谷川 僕も女性は未知ですね。でも僕は、尾崎世界観が書く女性が好きなんです。女性のファンの方からもよく、「なんで女性の気持ちがわかるの?」って言われているのを聞くんですけど、ということは、尾崎さんの思う女性って、世の中の女性に共感を得るものなのかなって。
――最後に、Meの読者に向けて、メッセージを頂ければと思います。
尾崎 「イト」という曲、本当に自信があるので、とにかく聴いて頂きたいです。あとはライブも、絶対にいいものをするので、来てください。
女性の方は、僕らの音楽で、生活の中に、寄り添うというよりは、いい違和感を残せると思うので、その変な違和感を感じてもらいたいです。そしたら、より楽しくなるんじゃないかなと思うので、曲を聴いてください。
長谷川 バンドをもともと聴かない方にも、今回の「イト」は届いてくれたらいいなと思うんですね。バンドものだから聴かなかったって方にも、興味を持つきっかけになれたら嬉しいなと思います。
CD情報
クリープハイプ NEW SINGLE「イト」
2017年4月26日発売
UMCK-5624 1,200円(税別) 1,296円(税込)
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