悩みのない人などいないでしょうし、八方塞がりでにっちもさっちも行かない、という経験は誰にでもあるんじゃないかと思います。
うつ病や自殺が増えている現代において、“悩んでいる人に寄り添う姿勢”というのは、非常に重要です。
前回まで、「悩みの共有」「話を聞き出すこと」「話を聞く姿勢」「悩みを抱える人の思考」「寄り添う人の姿勢」についてご紹介してきました。今回は、「相談を受ける際の注意点」についてご紹介したいと思います。
1、一緒に落ちてはいけない
精神病を抱える患者の家族が、その患者を支えて生活する上で、うつ病などに罹患する率は高いと言われています。
看病する際に、寄り添う、ということが同調に成り代わりやすく、看病することも、見ていることも辛い毎日の中で思い悩んでしまうからです。
相談を受ける側に、リスクが一切ない、ということはありません。深刻な悩みを受けて、一緒に辛い気持ちになってしまう人もいます。
実際、カウンセラーの人の精神的負担というのも大変重く、カウンセラーが別のカウンセラーのカウンセリングを受ける、ということもあるようです。
相談者は辛い気持ちを抱えています。家族や友人は、それを解決してあげたくて、一緒に痛みを共有したくなるかもしれませんが、痛みをもらい受けてしまっては、「痛みの感染」と言えるかもしれません。
2、一定の距離感が必要
本気で寄り添う、長く寄り添う、そして結末に立会いたいと思うのなら、あまり深く関わりすぎてはいけません。
よく「私たち親友だよね」と言って毎日会っている人たちが、ある日突然遊ばなくなって、それ以来まったく連絡をとらない、というパターンがあります。
友人関係とはとかく、そのように消費して終わる、もののように思われるかもしれませんが、本当の友情とは毎日ベタベタ一緒にいることを指すのではありません。
ごくたまにメールをしたり、時々会ったり。それでも友人です。大事なのは、くっついたり離れたり、という不安定な関係ではなく、「私はいつでもここにいる」という安定した一定の距離感です。
相談者が「会いたい」というときには会えて、いつもと同じように話を聞く。好きだとか嫌いだとか、感情的にならない。
時に相談者に「振り回されている」と感じることもあるかもしれませんが、それでも見捨てることなく、ロングスパンで様子を見続けること。
大きな悩みの解決は、短期決戦で終わらないことが多いです。そのため、見守る側は相談者を見放さない持久力と、自分のメンタルを維持する、というスキルが求められます。
(7)へつづく。