児童相談所には、年間約10万件の虐待の相談があり、表面化していない虐待も含めると他人事と切り捨てることはできません。
厚生労働省が定義する虐待は、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4つがあり、もしかしたら今もまさに身近なところで虐待が起きている可能性があります。
「虐待って嫌だね、私は絶対しない」と思うことは簡単ですが、もし無意識に行っている行動が虐待の一端を担っていたら…とても恐ろしいことです。前回に引き続き、自分が虐待の加害者にならないように知っておくべきことについてご紹介します。
【こどもを守るために大人を守る】
虐待は許される行為ではありません。「しつけのつもりで殴ったら死んでしまった」という、虐待死亡事例も増加しています。
では、虐待してしまう大人が悪い人なのでしょうか。彼らはそもそも犯罪者としてそこに存在していたわけではありません。
たとえば、職場でいじめを受けた親が、そのイライラをこどもにぶつけた場合はどうでしょうか。もちろん、だからと言って虐待していい理由にはなりませんが、直接的ではないにしろ、虐待の原因のひとつとして“職場いじめ”は上がるはずです。
ということは、職場で親をいじめた人々は「私は関係ない」と思いながらも、間接的に児童虐待に関わってしまった、ということになります。
もしそれでこどもが虐待後に死んでしまった場合、間接的に殺人に関与した…と考えることもできるのではないでしょうか。
罪に問われることはありませんが、このように“間接的に関与しながら知らんぷりして生きている”という人は多いような気がします。
職場などでも「イライラしたから部下に八つ当たりをした」という行為から、別の方向へ虐待に発展しないとも限りません。
また、“虐待”とは“児童虐待”に限らず、家族間・夫婦間、恋人間でも起こることです。最近ではデートDVや、高齢者虐待なども話題です。
こどもの虐待を減らしたい、と思いながらも、職場のいじめに関与したり、特定の誰かに嫌がらせをしたりしていては、本末転倒です。
自分のこどもを守りたい。将来こどもを産んだら虐待なんかしたくない。虐待によってこどもに死んでほしくない。そう思う気持ちがあるのなら、まずは自分の隣の人に優しく接することが大事です。
(6)へつづく